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コラム(73) 2013年12月
日本再生のための決断と実行を示すとき
 世界規模で様々な構造変化が急速に進展する激動の現代において、将来、過去を振り返ってみたとき、平成25年は日本にとって特別の意味を持つ年となっているのかも知れません。
 本年は、昨年末に交代した現政権が本格的に始動し、その政策の中核に位置づけている「アベノミクス」、税と社会保障の一体改革への取組と消費税増税、TPP交渉への参加、さらには半世紀振りとなる2020東京オリンピック・パラリンピックの開催決定など、この何年か議論し取り組んできた課題を具体化し、実行に移された年となりました。20年以上に亘る景気の低迷や日本全国に染みついたデフレからの脱却の芽がようやく見えてきた今こそ、日本の未来のために政治の真価が問われています。
 今年1月、政府と日銀は、我が国の金融史上初となる共同声明を発表しました。日銀は、既に欧米諸国では実施されていたものの我が国では導入していなかったインフレターゲットを2%に設定し、政府は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」が一体となった経済政策である「アベノミクス」を打ち出して、従来の経済政策レジームから大きく舵を切り、市場や家計、企業のマインドを大きく転換しました。
 この「アベノミクス」は、ジョン・メイナード・ケインズが「雇用、利子および貨幣の一般理論」を著すより数年前の1930年代初頭に、時の大蔵大臣であった高橋是清が、世界恐慌からデフレスパイラルに落ち入っていた日本経済を世界でいち早く救った、大胆な金融緩和と財政出動に連なるものでもあります。また当時日本は、関東大震災の復興途上にあって、ニューヨーク証券取引所における株価大暴落に端を発した世界恐慌に巻き込まれており、同じくアメリカ発のリーマンショック後に未曽有の東日本大震災に見舞われた現代日本は、その状況も重なるのであります。
 本年に入って、2四半期連続で年率にして3〜4%の高い経済成長となり、有効求人倍率も0.95倍にまで回復するに至り、安倍首相は世界に向けて「JAPAN is BACK(日本は戻ってきた)」と宣言しました。消費の増加が生産の増加、所得の増加へとつながる好循環がようやく生まれ、実体経済の足取りは確かなものとなってきています。こうした景気回復を持続させ、全国津々浦々まで実感できるよう、「経済政策パッケージ」による新たな経済対策や政労使の協議などによる所得増に対する積極的な取組も始まっております。
 県政のこの1年に目を転ずれば、平成29年度を目標年度とする長野県中期5か年計画「しあわせ信州創造プラン」や平成39年を目標年次とする「長野県新総合交通ビジョン」など中長期の計画が相次いで策定されました。
 また、1年余に迫った北陸新幹線の長野・金沢間の開業に向け、JR東日本管内での路線表記が決定し、リニア中央新幹線も2027年の東京・名古屋間開業を見据え、本格的な建設が始まろうとしています。こうした中、日本列島の東西中央にあって太平洋と日本海の中間に位置している本県は、東日本と西日本、太平洋と日本海を高速化・広域化して有機的な結びつきを強める本州中央部広域交流圏(仮称・長野県新総合交通ビジョンにおける将来像)の構築に向けて、新たな高速交通網時代に入っています。
 今後、我が国において急速に進展する人口減少と高齢化は本県にとっても深刻であり、平成42年には平成22年に比べて約15%もの人口が減少する見通しとなっています。1970年代半ばにピーター・ファーディナンド・ドラッカーが「見えざる革命」の中で指摘した、人口構造の変化と高齢化社会が現実のものとなっております。このことは、県内の労働人口の減少と創造力の低下を招きかねず、県内経済停滞の一因となるのではないかと危惧されます。このため、県内の活力を維持していく観点からも、交流を促進し、県外さらには国外からのインバウンドをも強化する広域交流圏の整備は、引き続き着実に取り組んでいかねばなりません。
 新たな広域交流圏では、県内において中信地域が結節点となってまいります。本県と岐阜、福井を結ぶ高規格幹線道路整備の一部として、中部縦貫自動車道の松本波田道路5.3kmについて設計等が行われ、また国道158号線においても、大型車のすれ違いが困難となっている奈川渡ダム周辺の2.2kmの道路改良について、早期工事着手に向けた調査・検討が進められています。さらに、地域高規格道路である松本糸魚川連絡道路についても、地域の御意見をお聞きした上で詳細な調査・検討が行われています。このルートは「敵に塩を送る」という故事を生み、古来、先人が北陸地方との交流を温めてきた街道であり、早期整備に向けた一層の取組が望まれます。
 鉄道網として、中信地域と首都圏を結び、地域産業や経済の発展、さらには観光振興を図るうえで重要な路線であるJR中央東線は、将来、北陸新幹線とリニア中央新幹線の県内波及効果を一層高める役割を担うことが期待されています。輸送力の増強はもとより、沿線の富士山、諏訪湖、日本アルプスといった優れた眺めを楽しみながら旅行していただけるよう、快適性の高い車両の早期導入も強く求められるところであります。
 県内唯一の空の玄関口である松本空港は、札幌と福岡にそれぞれ1日1便が就航し、北海道と九州との広域交流を支える重要なインフラであり、平成22年にFDAが運行を開始してから徐々に利用が伸びております。さらなる広域交流ネットワークの拡大と利便性向上のため、既存路線の複便化や新規路線の開設が望まれます。
 こうした広域交流圏の構築を着実に進める本県は、国内有数の山岳県でありますが、視点を変えれば、魅力的な山岳観光資源に富んでいるということでもあります。今後県では、本年策定した「長野県観光振興基本計画」に基づき、山岳高原などの強みを生かした滞在型観光地の形成に重点的に取り組んでいくこととしております。中でも3,000m級の雄大な穂高連峰と清冽な梓川が織りなす山岳観光地である上高地は、乗鞍や白骨温泉といった周辺の優れた観光資源とともに、国内のみならず海外からも数多くの観光客が訪れています。長期間滞在していただけるよう、長野県山岳観光のリーダーとしての役割がますます重要となってまいります。
 今こそ私たちは、持てる可能性を最大限に引き出して競争力を強化し、頑張る人たちの雇用を拡大し、収入を増やし、次代を担う若者や子育て世代に夢と希望を与えられるようにしていかなければなりません。2020東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したとき、閉塞感、沈滞ムードが漂う国民を高揚感に包み、大いに元気づけたことは記憶に鮮明であります。未来への希望は、かように人々を元気づけるものであります。長野オリンピック・パラリンピックを成功させた経験を持つ本県としても、できる限り協力し、東京オリンピック・パラリンピックの成功が日本再生の象徴となるよう期待したいと思います。
 安倍首相は、10月15日、国会の所信表明演説において、欧米列強が迫る焦燥感の中、あらゆる課題に同時並行に取り組まなければならなかった明治初頭に、中村正直がサミュエル・スマイルズの著書を訳した「西国立志編」の「心志あれば必ず便宜あり」という言葉を引用し、明治人の「意志の力」に学んで、私たち自らが「強い日本」を創るために前に進んでいくのだと決意を述べました。少しく時を遡れば、幕末、日本の大きな転換期にあって明治へと時代を牽引した若者たちの精神的指導者であった吉田松陰は、「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に夢なき者に成功なし。」と説いています。
 現代日本が直面している経済再生、財政再建そして社会保障改革といった複数の課題を同時に解決することは、確かに容易なことではありませんが、ようやく芽吹いてきた経済回復のこの機を逃すことなく、「未来への夢」と「決断と実行」そして「意志の力」をもって必ずや困難を乗り越え、先人たちから受け継いだ優れた社会資産を育て、次世代に引き継いでいきたいと思います。そして、将来、平成25年が日本の新しい成長の幕開けの年であったと評価されることになるよう、県議会議長として全力で県政に邁進してまいる所存であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(72) 2013年11月
希望に満ち、元気な農山村の明日を目指して
 本県は、県土の約8割が森林を中心とした「山」で形成され、古来より様々な「山の恵み」を受け、その中で生活を営み、文化を育んできました。このような中、山の恵みに感謝するとともに親しむ機会として、7月第4日曜日を「信州 山の日」に制定することが予定されております。
 人類は、狩猟や採集を行う生活から農耕生活を営む生活に移行すると、次第に定住し、集落を、豊富な水や肥沃な土地、豊かな森林等に恵まれた場所に求めるようになり、そしてそこに文明を誕生させてきました。
 そもそも文明は、資源を利用することによって成立します。調理や暖房用の燃料として木材が使われ、人口の増加に伴って居住地や農地を拡大するため、森林は切り拓かれました。さらに、大型の建築物や艦船の建造、鉄など金属の精錬、鋳造にも木材が大量に使用され、文明の発達に応じて木材の消費は飛躍的に増えました。
 森林を利用し、木材を消費しても、森林の再生能力の範囲内であれば、森林は再生しますが、森林の再生能力を超えた伐採が続けられれば、森林の荒廃や木材の不足を招き、文明の衰退が始まります。
 古代の例として、世界最古の文明と言われている、シュメール文明の衰退があげられます。叙事詩「ギルガメッシュ」によれば、都市国家ウルクの王ギルガメッシュが、レバノンスギの森林を手に入れ伐採する姿が綴られ、人間が自然を征服しようとする様が描かれており、それにより森林が急速に減少し、洪水や土壌の流出が引き起こされ、繁栄を誇った文明も滅亡したといわれております。
 また、アテネやスパルタのような都市国家が栄えた古代ギリシャ文明も、森林に覆われた山地の肥沃な地を背景に生まれましたが、食料生産の拡大のため農地が拓かれ、多くの森林が農地に換わり、その結果として、森林の減少や荒廃等によって洪水の発生や土壌の流出を招き、次第に衰退の道を辿っています。
 一方、我が国では、豊臣秀吉の時代に、木曽の山で木曽川を利用した運材ルートが確保され、聚楽第や伏見城の造営に使われはじめましたが、徳川の時代になると、江戸城の大改修や名古屋城の造営のために大々的に木材が伐採され、急速に森林が衰退してしまい、「ひのき1本首ひとつ」と言われるほどの厳しい保護のもとで森林が育成されております。
 本年は、20年毎に行われる伊勢神宮の式年遷宮が行われております。正殿を新たに建て御神体を遷す遷宮は、西暦690年以来約千三百年の伝統がありますが、その遷宮には木曽の「御杣山(みそまやま)」の木材が使われており、これまで山を育てあげてきた先人達に感謝し、これを機に「山の恵み」への認識を新たにするところであります。
 現在の課題に目を向けますと、生活の基盤となる森林の質や価値を向上させ、森林の持つ様々な機能をより高度に発揮させるために、引き続き森林整備を積極的に推進し、健全な森林の維持や地球環境の保全を図ることが求められております。
 また、充実しつつある森林資源を活用して「林業・木材産業」を再生し、あわせて山村を活性化していくことが喫緊の課題となっております。
 本県では、戦中戦後の過伐、濫伐によって荒廃した森林を再生させるための造林事業により植林された木材が60年あまり経過し、全国3番目の豊富な森林資源を有するまでに至ったところですが、木材価格の低迷による採算性の悪化などにより、木材資源の有効活用が進んでおりません。
 そのような中で、「信州F・POWERプロジェクト」により、県内初となる集中型加工施設が平成27年度から稼働することにより、持続的な木材需要の創出が期待されておりますが、日ごろから木材の利活用を積極的に進めて、山村が元気になるよう努めていかなければなりません。
 一方、農業に関しまして、豊かな生活を求め、米作りを行うために水との格闘の歴史がありました。その一例として、農林水産省の「疎水百選」に選定された安曇野市の「拾ヶ堰」でありますが、江戸時代後期の文化13(1816)年に開削され、当時で約300haの水田が開かれました。安曇野の中央部を貫く標高570mの等高線に沿った15?の流れで、頭首工から放流口までの高低差は5mほどしかなく、初歩的な測量器しかない時代に、述べ6万人の地元農民の手により、3か月余りの短期間に成し遂げられた驚異的な事業であります。堰の名前も10か村を中心とした農民たちの努力によってつくられたことから「拾ヶ堰」と名付けられております。
 このような歴史を辿りながら、長野県農業は、変化に富んだ気象や地形を活かし、農業者の先進性と勤勉性による高い技術力により、園芸品目を基幹として質の高い多様な品目が生産され、地域の基幹産業として貢献してきました。しかし、本県農業を支えてきた昭和1ケタ世代とその後世代のリタイアが急速に進み、産地の維持や農地の利用が困難となることが懸念されております。
 また、農村につきましては、地縁的・血縁的結び付きを中心に形成された約5千に上る農業集落を基礎として、多くの住民の生活の場であるとともに、食料の生産と安定供給など地域の基幹的産業の舞台として貢献してきました。さらに「ふるさとの原風景」として、営農の継続により生み出される2次的な農村の機能美が、県内外から訪れる多くの人々に安らぎと憩いを与えております。
 しかしながら、人口減少・高齢化の局面を迎える中で、特に中山間地域においては、耕作放棄地の発生や野生鳥獣による被害が拡大するとともに、農道や水路等の農業用施設の維持も困難となりつつあります。また、都市近郊の農村においても、混住化、農業者の減少等により、農業者と住民の相互理解が希薄化し、地域住民が協同で行う農業・農村の多面的機能の維持や農村文化・伝統食などの継承も困難になることが懸念されております。
 しかしながら、農業国と言われた我が国のGDPに対する農業部門(平成23年4兆6025億円)の割合は、近年では1%程度と過去に比べ低下してはいるものの、主要国における農業生産額の順位は第5位であり、日本の強みを生かした輸出の拡大などにより、生産額を増加させていくことは十分可能であり、日本の農業の拡大を図る機会でもあります。
 また、本県農業の現状は、平成23年の農業産出額が2736億円で全国(8兆2463億円)比率は3.3%であり、近年は横ばいで推移しておりますが、平成3年に過去最高となる4千億円を超えたこともあり、国の「攻めの農林水産業」の施策展開に呼応し、競争力の強化を図り、持続可能な農業とし、農村をより一層元気にしていくポテンシャルは大変高いものがあります。
 そのためには、多様な担い手の確保や他産業とのつながりによる産業としての広がりの形成、企業的な経営感覚のもと農地の集積や経営体の育成などによる経営基盤の強化や、農業者が2次・3次産業の様々な事業者と連携し、農産物や地域資源の価値を高めることで、農業者の所得向上や地域の活性化につなげる、「6次産業化」を、今後強力に推進していかなければなりません。
 本県は、日本総合研究所による「平成24年日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング」で全国総合1位となりましたが、大きな転換点にある本県の農業・農村、林業の活性化を図り、農山村に受け継がれた豊かな資源を活用した経済成長と多面的機能を発揮させることにより、県民の皆様がさらなる幸せを実感していただけるよう今後も全力投球をしてまいる所存であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(71) 2013年10月
社会保障制度と健康長寿長野の現況と方向性について
 現在、我が国は、世界の主要先進国の中で最も高齢化が進行しており、今後も一層の高齢化が見込まれています。いわゆる「団塊の世代」が75歳以上を迎える2025年には、人口約1億2千万人のうち65歳以上は約3500万人となり、国民のほぼ3人に1人が65歳以上という超高齢社会が到来するといわれています。こうした社会に対応する社会保障制度の在り方について検討するため、政府に設置された「社会保障制度改革国民会議」の最終報告書がとりまとめられ、8月6日、安倍首相に提出されました。
 報告書では、高齢患者の増加に対応するための病床整備や、住み慣れた地元地域での在宅医療・介護の提供体制の充実といった、サービス面の施策の推進について触れる一方で、年々増加し、ついに100兆円を突破した社会保障給付費が、高齢化の進展に伴い今後も伸び続けることは確実であり、国民への負担の増大は不可避であることを訴え、消費税の増税や利用者負担の増額といった国民に応分の負担や意識改革を求める内容であります。
 本年、長野県は厚生労働省の発表した都道府県別平均寿命の調査で、男女ともに日本一(男性:80.88歳 女性:87.18歳)になるという栄誉にあずかりました。また、一人当たりの老人医療費についても、全国的にみて非常に低く抑えられており(平成23年度:全国44位)、本県は、世界に誇るべき健康長寿社会を確立しているといえます。
 こうした健康長寿社会を達成した原因は、いくつか考えられますが、一つには、年をとっても生きがいを失わない、地域のつながりを大切にするといった県民性が挙げられます。全国的にみても、高齢者就業率が高い都道府県は老人医療費が低く、健康で元気な高齢者が多い傾向にあるといわれていますが、本県は、65歳以上の高齢者の就業率が大変高く(平成22年:26.7%)、昭和60年の調査以来、長らく日本一を維持しています。また、日頃からの地域活動等への積極的な参加も、地域社会とのつながり、そして健康で豊かな老後といった 健康長寿社会を形作る重要な要素となっており、それを反映してか公民館の数も日本一(平成23年:1236館)となっております。
 更には、地域に根差した保健補導員や食育改善推進員等の熱心なボランティア活動が、健康長寿社会の形成と、県民の健康への意識の醸成に重要な役割を果たしてきたことが挙げられます。今でこそ、健康長寿県である本県ですが、かつては脳血管疾患の死亡率が全国でも高い地域で、50年ほど前には脳卒中多発県として、ワースト1になったこともあるという状況でした。これに対して、当時の医師、保健婦や、ボランティアである保健補導員、食育改善推進員によって、減塩運動をはじめとした、食生活改善運動などの予防活動が展開されてきました。これらの各地域、各家庭への粘り強い草の根の活動によって、食生活をはじめとした生活習慣の見直しが図られ、今日に至っております。
 豊かな自然環境の中で培われた勤勉な県民性に加えて、長年にわたる地域に根差した地域医療活動や、ボランティアによる保健活動。こうした時間をかけた粘り強い取組みによって、県民一人ひとりに、高い健康に対する意識が醸成され、それらが、現在の本県の健康長寿社会の造形の主たる要因と思われます。
 県においては、健康長寿のための施策等について、保健医療総合計画をはじめとした、保健と医療に関する総合的な施策を実施するとともに、こうした先人の取組みを受け継いだ取組が進められており、そのフロントランナーが、まずは食育推進の取組みであります。本県では、平成20年から長野県食育推進計画を策定し、さまざまな機関・団体と連携協力して食育の推進に取り組み、計画の策定前に比べて、およそ三倍近い食育ボランティアの増加や、毎日朝食を食べる児童・生徒の増加などの成果を上げております。
 また、食と並んで、人間一人ひとりの人生における生活の質、いわゆるQuality Of life(QOL)にも関わる「歯」の健康について、議員提案条例という形で平成22年に歯科保健推進条例が制定され、この条例に基づいて策定された、歯科保健推進計画による取組が進められているところです。とりわけ、子どもの虫歯予防に重点を置き、小学校等におけるフッ化物洗口等の先進的な取組を推進しており、すでに一定の成果を上げております。
 これら県の推進する取組の中で共通していることは、県民一人ひとりが健康に対する意識を持ち、学校や家庭、地域全体での健康の増進を推進していくという、今まで本県が培ってきた健康長寿に対する取組の延長にあるものと認識を深めております。
 少子高齢化の急速な進展や、国・地方ともに極めて厳しい財政状況の下で、国民が安心し、希望が持てる社会保障の実現が求められていることを踏まえれば、国・地方双方にとって安定財源の確保は避けることのできない課題でありますが、こうした健康、長寿は、それを維持、推進していくための社会制度の確立が極めて重要であり、地方や国が取り組んでいかなければならない本質的課題でもあります。
 本県の健康長寿社会を更に進化発展させるべく再度原点に戻り、自分自身や家族、地域の健康といった、県民一人一人身近な範囲での取組み、つまり健全な共同体意識の醸成こそが、21世紀の最大の課題と考えます。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(70) 2013年09月
地方の再生なくして日本の復権なし
 現代社会は数百年規模での大きな変貌の転換期の真っただ中におり、既存の政治システムは、繁栄による配分から負担の分担が重要な課題となり、次なる時代への正しい文明史観の確立が求められます。
 先進諸国は新たなる経済成長戦略と社会保障制度に対し、複合的かつ高次元の対応が迫られており一方、新興国とりわけアジア諸国は、日本の明治を想起されるほどの国民の気概のもと、世界の重心となりつつあります。従って、日本の政治は主体性を持って真に国民のための舵を切り、迫りくる危機から日本を救うべく政治的エネルギーを再熱させなければなりません。日本の真の国益について再考し、新たなる日本の造形に向け、戦後最大なる岐路に立った日本の未来に思いを馳せ、政治は正しい選択と決断を下さなければなりません。
 私も微力ながら県議会議長として、「地方の再生なくして日本の復権なし」を基本理念として、今後とも213万県民のための公正公平な議会運営に努めて参ります。
 長野県は、各種社会資本整備・商工業・農業・医療・介護・教育・環境・危機管理をはじめ、山積する諸課題を抱えておりますが、新しい時代への構想力と実行力を持って、この難局に挑戦することが県議会の責務であります。
 私も歴史的分水嶺の今、中央と地方をはじめ各分野における格差を正しく解析し、地域社会が醸成した歴史・伝統・文化・習俗という長野県の貴重な遺産を基軸に、豊かな県民生活の向上と人間の復権を目指す政治に全力を傾注する所存であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(69) 2013年08月
地方活性化の可能性
 政府が推し進める経済政策「アベノミクス」の効果で、日本全体の景気は徐々に明るさを取り戻しつつある一方で、地方では未だに景気回復が実感できない状況が続いています。東京一極集中で「ヒト、モノ、カネ」は、ますます国の中央に集まり、地方が衰退していく流れは止めようがないように見えます。地方経済の象徴である商店街は閑古鳥が鳴き、工場の閉鎖が相次ぎ、仕事を求めて若者は外へ出ていく。
 県の調査によると、県内の商店街数は平成2年度の433から23年度の242へ、工場数も平成2年の10,287から22年の5,583へと、いずれも5割弱の大幅な減少となりました。また、5年ごとの国勢調査によると、長野県内で平成2年に18歳の人口が29,383人だったのに対し、平成7年の同調査では23歳の人口が28,813人と微減に止まりましたが、平成17年の18歳人口が20,218人に対して平成22年の23歳人口は18,403人と約1割減であり、年を追うごとに、高校卒業後に相当数の若者が県外に流出している現状が推察されます。
 地方に未来はないのでしょうか。実は、地域資源が乏しい中で行政や民間が知恵を絞り、活気を取り戻した例はいくつもあります。以下に実例を挙げます。
 徳島県に高齢者比率が約50%で、人口2,000人程度の上勝町という自治体があります。古くから林業やミカンの栽培が主要産業になっていましたが、輸入自由化などの影響で経営が苦しくなっていたところ、追い打ちをかけるように1981年に寒波に襲われて大半のミカンが枯れる大打撃を受けました。そこで野菜を中心に品目を増やして対応。こうした流れの中で、高齢者にも手軽に取り組める仕事として1987年に「葉っぱビジネス」が誕生しました。
 取り扱う「葉っぱ」はモミジや南天など、日本料理に付け合わせる「つまもの」を指し、女性や高齢者も簡単に取り組めます。ただ、当初から順調に事業が進んだわけではなく、市場が求めるものとのミスマッチで売れない時期もあったと聞きます。しかし、今では高齢者が市場情報をパソコンで収集して、全国に出荷しており、中には年収1,000万円以上稼ぐ高齢者もいらっしゃるとのこと。町の産業の一つとして成長したことに留まらず、生きがいづくりにもつながっています。
 県内を見渡しますと、上高井郡小布施町の例があります。町は葛飾北斎と高井鴻山(こうざん)の残した歴史的な文化と、特産物の栗をコンセプトにしたまちづくりを進めてきました。街並みづくりでは、ゾーンを設定して環境デザイン協力基準を設け、歴史文化ゾーンでは瓦屋根に大壁造り、栗の木のレンガを歩道に敷くなど地域の歴史と素材を生かしてきました。
 文化活動では、地域の芸術家による作品展の開催、まちづくり株式会社「ア・ラ・小布施」の設立など積極的な取り組みが行われてきました。また、地域特産の栗を、観光客に菓子や料理として提供するなど、「地産地消」の取組を続け、今では小布施町の代名詞として「栗のまち」と言われるほど、定着しています。
 そして、我が地元の松本市の一例を御紹介します。
 近年、スポーツ観戦が盛り上がりを見せてきました。サッカーチーム・松本山雅FCの活躍と選手を陰で支えるサポーターの熱狂ぶりです。もともとはアマチュアチームにすぎませんでしたが、1975年に北信越フットボールリーグ発足に伴って同リーグに加入すると、2006年に同リーグの1部に、2010年にはJFLに昇格。翌年は元日本代表の松田直樹選手も加入して大いに期待されたシーズンでしたが、序盤は成績が低迷。さらに、チームを引っ張っていた松田選手が急性心筋梗塞で亡くなる悲運に見舞われました。誰もがシーズン中の「終戦」を覚悟したかに思えましたが、終盤で驚異の快進撃を続けて奇跡のJ2昇格を果たしました。小さなクラブチームの成長物語の序章が完結した瞬間でした。
 試合会場では、熱心なサポーターたちが応援席をチームカラーの緑に染め、声援を送り、心を一つにして応援歌を歌う様子は壮観です。チームの上昇気流に乗るかのように、そこかしこにはためくチームの旗は、街に彩りを添え、試合当日にユニフォームを着るサポーターが市街地で散見される様子は、日常的な光景となりました。また、市や民間企業も資金面でサポートするなど、街を挙げてチームを応援する雰囲気がみなぎっています。昨シーズンの松本山雅FCの経済波及効果は約24億円に上ったといわれ、冷え込んでいた地方経済に大きな刺激となったことは間違いありません。
 地方の活性化に「これ」という答えはありません。何でもない葉っぱが産業として成立した要因は、「商品になる」と目論んだ先駆者の着眼点の鋭さがあります。小布施町は統一意識を持って「栗のまち」としてのブランドをつくり上げた戦略性と関係者のまとまりの良さがあります。松本市は「サイトウ・キネン・フェスティバル」に代表される音楽や上高地に代表される山岳観光等に力を入れており、元来、非常に文化の香りが高い地域であることは改めて言うまでもありません。スポーツ熱が盛り上がることも自然な流れであり、そこに郷土愛が加味されて、ちょっとした社会現象になっています。
 地域資源を見つめ直す視点、ブランド戦略の構築、地域のまとまり、成熟した文化そして郷土愛。こうしたキーワードが地方の閉塞感を打ち破るヒントと言えそうです。
 ※山雅の経済効果は松本市にあるシンクタンク「SCOP」が発表
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(68) 2013年07月
成長戦略と産業イノベーション
 長野県経済は、冷涼な気候と美しく多様に富んだ自然環境の中、歴史や文化伝統を尊重し、新しい分野の開拓にも積極的に挑戦してきたそれぞれの産業のたゆまぬ努力と精進によって着実に発展し、県民生活の向上を支えてきました。
 長野県を取り巻く最近の経済情勢は、6月5日、日銀松本支店が発表した経済動向によりますと、「長野県経済は下げ止まっている」とされ、底入れの兆しが見え始めています。今後は、安倍内閣が掲げる、いわゆるアベノミクスが実体経済へ波及し、デフレ脱却と本格的な景気回復に向かうことが期待されます。
 こうした中、長野県では、県内産業の再生や、次世代産業の創出を目指し、6月7日に「長野県産業イノベーション推進本部」を設置し、国の成長戦略と歩調を合わせ、県内経済の活性化に向け、取り組むこととしております。
 これはすなわち、県の新総合5か年計画である「しあわせ信州創造プラン」において、その基本方針の一番目の柱に位置付けた、『「貢献」と「自立」の経済構造への転換』の具現化を図るための取り組みであり、政府の成長戦略と軌を一にし、産業活性化の視点で、信州産業の再生を図り、技術と精神に裏付けられた長野県の持つ高いポテンシャルに立脚した技術集積と企業家精神を基礎に、次世代産業の創出をめざすものです。
 アベノミクス3本の矢のうち1本目と2本目の矢である「積極的な金融緩和」、「機動的な財政出動」は政府が担うところですが、本格的な景気回復のため、最も重要な3本目の矢である「成長戦略」は、世界的な人口動態を踏まえたグローバルな経済成長と国内の規制改革の2つがセットとなり、はじめて成長の歯車が動き出し、その回転が一層加速されるものです。
 規制改革に伴い期待される国内産業のポテンシャルは、内閣府の国民経済指標によれば、2010年度の県内総生産(都道府県GNP)の国際比較において、東京が約91兆円で韓国(約86兆円)を、また、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県が約160兆円でインド(約138兆円)を、さらには、我が長野県が約8兆円でスロバキア(7.4兆円)を、それぞれ上回るなど、国内産業の潜在的な成長力を示すものであり、一層の国内規制改革による経済活動の活性化が、成長戦略における安定的実現の要です。
 今後「長野県産業イノベーション推進本部」において、航空宇宙や国際観光などの特区の検討、公募による後継者探しなど事業承継の新たな仕組みづくり、信州大学のナノテク技術を活用した水浄化の研究拠点整備など、具体的な検討が進められますが、経済界とも十分に連携を図りながら、次世代産業の創出を加速するためのエンジン役として、長野県経済の未来に向けた発展の基礎づくりに全力を挙げて取り組むことを期待するものです。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(67) 2013年06月
21世紀の成長戦略の意味
 アベノミクスの最重要政策である第3の矢が、各メディアを通じてそのフレームが発表され、いよいよ本格的な経済政策がスタートを切る段階になってきました。次元の違う金融の量的緩和と機動的な財政出動のうち量的緩和を実施中であり、総理のアナウンス効果もあり、日経平均・為替とも方向性は順調に思われますが、やや投機的要素も内在しており、長期金利も含め不安定感も一部でありますが、政府としては想定内という認識であるようです。
 財政出動については、国会で議決が総選挙の関係上遅れましたが、6月下旬から実効性が表れると思われます。経済財政諮問会議のマクロ政策、産業競争力会議のミクロ政策(成長戦略)を両輪と捉える時、やはり実践的で注目されるのは成長戦略のコンテンツになると思われます。
 発表された主なものは、民間設備投資を3年間で70兆円規模、海外でのインフラ受注を2020年に現在の3倍の30兆円、農業所得を10年で倍増、農林水産品の輸出額2020年までに1兆円に倍増、日本人の海外留学生を12万人に倍増、訪日外国人数を2000万人等であります。企業の活性化、農業再生、教育再生、観光戦略をその柱としておりますが、必ずや実現に向けて最大限の努力を期待しております。
 長野県も本年より総合5カ年計画をスタートさせましたが、とりわけ重要なことは長野県企業の復活であり、その根源はイノベーションを位置づけております。
 養蚕業から精密、そして電子工業へと構造転換を内陸型としてはほぼ成功してまいりましたが、失われた20年の間、次世代産業が必ずしも従来の構造変化の対応に対してマーケットまで水位が達していないのが現況であります。
 現在の日本の最大なる政治主題は、実は国土の均衡ある発展であり、1都3県で3500万人という異形な一極集中から、いかに創造性ある地方再生を図るかであります。
 地方は、人材・エネルギー・水等を大都会に供給し続けてまいりました。結果、地方は限界集落や中山間地、農業の多面的機能の劣化、商店街の疲弊、高齢化、人口の減少、公共交通の喪失等、難問山積であり、財政論から見ても今後の町村運営が将来的に極めて危惧されている現況であります。
 地方分権が主張されてから、一体何年が経過したのでしょうか。全国の各市町村は、ほぼ同様の傾向であり加えて深刻な事柄は、社会保障制度すなわち年金・医療・介護・子育て問題であります。
 社会保障制度の給付額は本年110兆円、医療費は37兆円であります。これらは増税で賄える範囲をはるかに超えており、まさに新たな発想による経済成長戦略の成功なくして解決できない最大なる政治テーマであります。
 その大都会とて、いずれ団塊の世代が後期高齢者になれば、大高齢化社会がいずれ到来いたします。世界第3位の経済大国日本が次なる時代に向けて大戦略を打ち立て、新しい価値を生み出すべく、そのスタートラインが現政権の成長戦略であることは明白であり、党派を超えた次元の高い議論が望まれます。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(66) 2013年05月
21世紀の日本の新たなる方向性を決断した2013年
 激動の2013年を考察すれば、いずれ近年における政治経済状況の新しい方向性を決断した挑戦の年として想起されるものと思われます。安倍内閣のアベノミクスの第一は名目GDPで3%、実質GDPで2%の成長、更に物価上昇2%を掲げ、この実現のため日銀による国債の買いオペなどにより大胆な金融緩和を行うものです。
 第二は機動的な財政出動による景気回復路線であります。企業が疲弊している今、経済成長の牽引役を政府がリードするものです。
 第三は成長路線、つまり積極的な産業政策であります。言うまでもありませんが、アメリカにおけるグリーンニューディール、フランスにおけるプジョー・シトロエンへの支援はその一例であります。
 いずれにしてもリーマンショック後の2008年から今日まで先進主要国は大胆な量的緩和を実施し、マネタリベースで米国は3.4倍、ユーロは2.3倍増やしましたが、日本は残念ながら1.4倍の小幅で、結局これが通貨戦争に出遅れ、今日のデフレと円高の一大要因となっております。
 アベノミクスの最終目的は地方振興であり、長野県に良き結果が出るまでに2〜3年と予測され、一刻も早い景気回復と賃金上昇を期待致します。
 一方、理念としての保守の論理から考察すれば、最も重要な問題は日本精神の活力の喪失であり、そのことが国・個人共に本質的な課題であります。安倍首相が施政方針演説の中で「一身独立して一国独立す」という福澤諭吉の基本理念を訴えていましたが、極めて示唆に富んだものであります。日本の守るべき価値とは何か、その価値はその国の文化や歴史と深く関わっており、結論的には日本精神、日本思想の根本問題になるのであります。近代合理主義は論理で問題解決を図るいわば設計主義ともいえるものですが、重要なことは精神としての個人の活力であり、それが国力ともなるわけです。ある意味、現代社会は伝統を忘却し虚無と人間疎外の不条理の時代であり、その思想の背後に深い現代社会への絶望を感じますが、かといって現代がいかにニヒリズムの時代、価値の崩壊状況であろうとも日本の文化の本質である、わび・さび、もののあわれ等の日本的風土の文化性というものを真摯に受け止め引き受け、その中で生きていくという日本人の気概こそが今最も必要と思われてなりません。
 従って、日本人は自らの国の先人が築かれた歴史伝統に強いプライドを持つべきであります。アーノルド・トインビーは日本の近代化を奇跡と表現しましたが、それ以上に日本人の持つポテンシャルは非常に高く、昨今の(はやぶさ、iPS)の例を見るまでもなく、各分野において世界のリード役を果たしていることを自覚すべきと思われます。人間社会の多くの規範は、所詮人工的なものでありますが、社会的現実というその複合性の中に日本人特有の無私の精神ともいうべき人間の真の実存があると意識した時、私たちは限られた人生の中で日本固有の哲学性に対し、改めて畏敬の念を持つことが極めて重要に思えてなりません。
 従ってともすれば気づかずにいる現代日本における多面的機能を有する農村社会の歴史、伝統、文化、習俗の崩壊は、実は日本社会の崩壊につながり実に深刻な問題であり、それは同時に長野県自身の問題であり、私も同様の認識と不屈の精神を持って、愛する長野県の再生に全力を傾注する所存であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(65) 2013年04月
開かれた分かりやすい県議会をめざして
 この度、3月18日2月定例県議会本会議において、第87代県議会議長に就任いたしました。
 今日、日本は戦後最大なる予断を許さぬ歴史の十字路に立っており、国・地方ともに新しい発想力をもって、この閉塞的環境に果敢に挑戦しなければなりません。
 なおかつ、政治経済の重心がアジア太平洋に移行しつつある中、数百年に一度とも思われる大転換点という認識に立つ時、これは産業革命以来ともいえる歴史的変化であり、まさに現代政治は新しいベクトルによる戦略性に富んだ政策と明確な理念を構想すべき、厳峻なる政治の時代となりました。
 このような潮流の中、無限の可能性を秘めた長野県は、成熟化という新たなる概念が到来し、結果、総合五ヵ年計画が策定され、この大きな時代の変化に対し、長野県自身の方向を定める意思決定機関として県議会が果たす役割は益々重要であり、県議会に対する県民の期待も大きなものがあると認識しています。
 現代のように、国、地方ともに厳しく、変化の大きな時代にあっては、長野県の方向を定める意思決定機関として、県議会が果たすべき役割は益々重要であり、県議会に対する県民の期待にも、大変に大きなものがあると認識しています。
 私は、このような時代の変化に対応すべく、長野県議会が築き上げてきた良き伝統を守りつつ、常に時代に対応した改革の意識を持ち、長野県議会の発展に尽くしてまいりたいと思います。
 そこで、まず一点目は、地方分権の時代に相応しい議会についてであります。
 明治維新、戦後改革に次ぐ、第三の改革と呼ばれた「地方分権改革」について、国会決議がなされて以来、20年が経過しました。 明治維新は、約20年で国のかたちが大きく変わりましたが、「地方分権改革」は未だにパラダイムシフトと言えるまでには至ってはおりません。
 しかしながら、地方分権改革は着実に進めなければならないものであります。地方分権が、今後更に進めば、地方自治体の自己決定、自己責任がこれまで以上に問われることとなります。それに伴い、二元代表制の一翼を担う議会の責任が増すことは言うまでもありません。
 議会としても、知事、執行部において、県民にとって適切な事業展開がなされるよう厳格なチェック機能を発揮すべく、議会としての「監視機能」を一段と高めていきたいと考えます。これまで、長野県議会は、決算特別委員会の機能強化などに取り組んで来たところですが、更なる「監視機能」の強化に向け、どのような方策が良いのか、ご議論いただき、方向性を見出してまいりたいと考えます。
 また、議会には、執行部側と競えるだけの政策立案能力も求められるところです。議会の監視活動、会派や議員の政策立案などをサポートするため、議会事務局の機能強化に取り組んでまいります。
 それと併せまして、やはり地方分権の時代において議会が果たすべき役割、県議会議員の活動の実態なども踏まえ、地方議会議員の責務について地方自治法において、より明確に位置付けるよう、求めてまいりたいと考えます。
 二点目としては、「開かれた議会」「分かりやすい議会」を目指します。
 長野県議会における情報公開のレベル、政務活動内容、意見書、決議の提出数は全国トップレベルにあり、長野県議会は全国的に見ても「開かれた議会」であります。このことは活力ある議会活動の証左であり、今後とも誇るべき伝統を堅持するよう務めてまいります。
 更に、これからの議会には、議案の議決などについて、県民に対して説明する責務、いわば「議決責任」ともいうべきものを果てしていくことが重要ではないかと思います。申すまでもなく、社会工学的視点に立ては、政治は最も人間社会に強い規制力を持つ故に、
 県民へのそうした道義的責任を自覚し、県民への積極的なアプローチに務め、県民にとって長野県議会が更に「分かりやすい議会」となるよう、努力してまいりたいと思います。
 最後になりますが、地方自治法では、「議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する」ものとされております。
 議長とは、議会を代表し、会議を主催する立場にあるからこそ、その職務の執行にあたっては、公正中立さが特に強く要請されるものと認識しております。
 従いまして、議会の運営にあたりましては、各会派や個々の議員のご意見に真摯に耳を傾け、常に公正・公平な立場で健全な寛容性を軸に、議論の過程を明らかにしながら議会制民主主義の本旨にのっとり、丁寧にその方向性を決してまいりたいと考えます。
 以上、申し上げましたことを私の基本姿勢とし、もとより微力ではありますが、県民の英知に満ちた選択と努力によって醸成された歴史・伝統・文化を尊重しながら、格調ある議会のもと長野県の発展と県民福祉の向上のため、誠心誠意、議会運営に務め、もって県民からの信頼性を一層高める県議会の造形に努力する所存であります。
 今後とも県民皆様のご指導ご協力を心からお願い致し、ご挨拶とさせて頂きます。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(64) 2013年03月
岐路に立つ日本の未来に思いを馳せ
 現代社会は、数百年に1度とも思われるパラダイムシフトに立ちすくんでいると思われます。いくつかの先進各国は成熟社会という段階に入り新たなる課題に直面し、社会保障制度を軸に高次元の発想力が求められております。一方、新興国は人口増加と国家資本主義とも言える、いわば日本の明治を想起させる国家国民の気概のもと、世界の重心となりつつあり、私達は歴史的には産業革命以来の大転換期にあるという自覚を基本的に認識しなければなりません。
 そうした状況下、日本は未だ外交政策・安全保障問題をはじめ、多くの分野でアメリカ依存体質から本質的に脱却できず、主権国家として健全な独立自尊の精神構造を国民の総意として構築できるかを問われており、時代を超えて変わらぬ価値を守り切れるかが2013年の最重要テーマを思われます。
 日本国憲法の前文の「平和を愛する諸国民の公正と正義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した」という一文の持つ意味は極めて重く、同時に急速に変化する現実の国際政治の苛酷な状況に対し、日本政治は外交・安全保障を含め的確な対応ができにくく、混迷を深めている今日であります。
 政治が主体性を持って国家国民のために舵を切り、迫りくる危機から日本を救うために私達は政治的エネルギーを再熱させなければなりません。日本の真の国益について再確認することこそ今、日本の政党政治が課せられた最重要課題であります。
 関係各国に対し、対等な視点から発信できる政治の復権のためには、明治以来の近代化の過程における日本の実質的政治運用の基盤である行政依存型からの脱却であり、真の政治を回復すべく政治家の高い志と行動が今ほど求められる時はありません。自立し、倫理観に富んだ日本再生のため、その叡智と勇気を結集し真に国民のための利益に反する濁流ともいえるグローバリズムを再考し、清冽な新たなる日本の造形こそが今日の国民的意思に他なりません。
 日本も世界も予断を許さぬ岐路に立ち続け、何年が経過したのだろうか、戦後最大なる岐路に立った日本の未来に思いを馳せ、日本政治は新しい選択と決断を迫られており、私も微力ながら地方議員として日本の永遠性を希求し、長野県民210万人のため県政全般に渡り、全力で頑張る決意であります。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(63) 2013年02月
歴史の十字路に立つ長野県再生元年に向けて
 昨年12月の総選挙は民意により安倍政権が発足し、速やかに約13兆円に上る24年度補正予算、そのうち経済対策が10兆円、更に25年度予算92.6兆円、15ヵ月予算の視点では100兆円を超える規模を臨時閣議で決定いたしました。日銀の金融緩和、財務省の財政出動、経済産業省の経済成長を複合的有機的にからませながら、15年間に及ぶ深刻なデフレ状況をこそが日本経済の最大の課題でありますが、地方交付税については、マイナス3921億円の17兆624億円となり、地方振興の点から危惧される点であります。
 将来に向けて展望を持って社会資本整備としての公共政策は、補正と25年度予算を合算すると約11兆円にも上り、地方経済の再生のスタートになることを期待致します。
 いずれにしてもアベノミクスが完成するには全治3年はかかると思われますし、長期的視野に立った国民各位の理解の上、決断できる安定政権こそが今、日本に求められている基本的理念に他なりません。
 歴史の十字路に立つ日本政治は、国・地方に関わらず新しい発想力を持ってこの閉塞的環境に挑戦しなければなりません。政治そのものを本質的に蘇生させるものは豊かな想像力であり、創造力であります。新しいベクトルによる新しい政策を予算化しなければ、国民は政治そのものを見放すことでしょう。故に、日本の政治は新しい方向性と的確な理念を提示しなければならない政治の季節となりました。20世紀という高度に発達した近代文明とそのテクノロジーやグローバル化について我々は謙虚に反省し、真に人間のための政治の復権を指向する必要があります。
 長野県においても、そのような観点から総合5ヶ年計画を策定し、私も議会側の会長として各般に渡り提言してきましたが、その中核となるものは、経済政策と教育問題でありました。多くのポテンシャルに恵まれた無限の可能性を秘めた郷土長野県が、全国都道府県のフロントランナーとして果たすべき役割は、極めて重要であります。従って、正当な歴史観を柱に日本の長野県の再構築を迅速に行わなければなりませんが、今日の日本の全体的状況は、衰運の兆しが各分野に感じ、強い危機感に苛まされております。
 私達は次の時代を担うべく、大きな包容力と寛容性を基軸に新たな文明社会の造形に努力しなければなりません。そうした意味で当面、経済成長の観点から次世代産業の育成は、産業構造の急激な変化の中で、最も重要であります。今ある現代文明が真に人間にとって望ましいものであったのかを踏まえながら、私も政治家の一人として時代の十字路に立つ現代政治に果敢に挑戦する決意であります。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(62) 2013年01月
国難の年、真の政治行為から希望の持てる長野県再生を!
 新たなる平成25年を迎え、心からお慶び申し上げます。
 
 日本の15年を超える先進国唯一のデフレ経済情勢は、あらゆる分野に深刻な影響を与えております。企業収益・雇用・財政・社会保障制度等、各般に渡り展望が開けずこの極限にも近い閉塞感を打ち破るべき健全な力強い金融財政政策が今ほど必要な時はありません。一方、外交・安全保障につきましても国際社会における我が国のプレゼンスは急速に低下し、領土問題をはじめ課題は山積しております。平和と独立を堅持すべく主権国家として真に自立した国家意思を持たない現況は、日本が衰亡の危機にあると言っても過言ではないと思われます。
 ヨーロッパの近代主義が終幕し、新たなる歴史の到来が予感される中、真の人間の為の文明秩序の造形を目指して県は長野県総合5ヵ年計画を本年から作動させるべく「確かな暮らしが営まれる美しい信州」を基本理念として策定中であります。
 その為に1、「貢献」と「自立」の経済構造への転換 2、豊かさが実感できる暮らしの実現 3、「人」と「知」の基盤づくり、を3本柱に具体的な諸施策・政策を議会側としても提言し、より質感の高い県民ニーズに応えられるものにすべく、私は議会側の会長として全力を傾注する所存であります。
 私達にとって日本政治の最大なるテーマは地方の振興に他なりません。県民の英知に満ちた選択と努力により醸成した歴史・伝統・文化・習俗といった守るべき価値を基盤としながら、新しい時代の確かな戦略性を政治が構想しなければなりません。
 政治への希望を回復させるべく未曽有の可能性を秘めた長野県再生に向けて、本年も県民の皆様のための議会活動に邁進する決意でありますので、引き続きご指導の程をお願い致し、ご挨拶と致します。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

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